2020年1月コスモス福岡支部歌会報告
2020年1月12日(日)定例のコスモス福岡支部歌会が、アクロス福岡2階セミナー室Ⅱで開かれた。選者は大野英子、司会は、前半大西晶子、後半栗山由利。詠草提出者18名中参加者は14名。最高得点歌は栗山由利。
〇渋滞や出国ラッシュのニュース聞きひとり厨で鍋底あらふ
この時期なので年末の歌であると読めるが、どこかに季節を示す言葉を入れたほうがよい。四句のひとりが寂しさの押し売りともとれるので「暮の厨で」などとすれば良い。このままでも年末の主婦の気持ちをうまく詠んでいるが、本当はここから独自性を出して欲しい。
「渋滞や出国ラッシュに縁はなく~」あるいは「渋滞を外して子らよ帰り来よ~」など。
このほか数首を挙げる。
〇診療所に「ペイペイ使えます」の旗旧りし団地も世代交代
ペイペイは「」でくくるならPayPayが正しい表記。「団地も世代交代」は主観。旗を生かして下句は「旧りし団地に新しき風」としては。
〇四十人傘寿の顔がならびたる同期会の集合写真、壮観
作者にはそう感じたのだろうが、元の人数もわからない読者はどうか。「壮観」と言葉で片付けずなぜそう感じたのかを詠む。
例えば「同期会に欠けしは三人傘寿なる四十人の集合写真」
〇ひと月を机上に置けど読みなづみ書棚にもどす『法然の哀しみ』
机上に置けどページが進まなかったという表現にねじれがある。置きっぱなしなのか頁が進まなかったのかあやふや。「ひと月を読んではとぢて読みなづみ~」
〇あちこちにポケモンゐるらし立つたままスマホを見入る人のかたまり
このままではポケモンゲームを説明しているだけ。あちこちにと人のかたまりが呼応していない。「ポケモンがいるのだらうなわらわらとスマホに見入る人が増えゆく」
〇明け方の夢のつづきか冬靄に踏む自転車のペタルが重し
夢のつづきとペダルが重いがつながらないのが惜しい。ペダルが重いとあるので「踏む自転車」は不要。「冬靄に」の「に」も曖昧。「明け方の苦しき夢がつづくごと冬靄のなかペダルが重い」
三十一文字しか使えないので不要な言葉を見極めて、本当に大切な言葉を入れる。
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