コスモス福岡支部12月歌会報告
12月8日(日)に、コスモス福岡支部12月の歌会をアクロス福岡セミナー室2で開催したのでその概要を報告する。参加者は18名、選者は藤野、大野、司会は前半大西、後半有川。最高得点歌は先月に続き増田順子の
〇駅 前 は ひ か り の ひ ろ ば 電 飾 の か げ に 黒 子 と な り て 立 つ 木 々
「黒子となりて」が冬のイルミネーションが取り付けられた木々をうまく詠んでいるとして評価が高かったが、「電飾のかげに」が二通りにとれてよくないという意見が出た。電飾が施されている木のことを表現しようとしているのだろうが、字義通りにとればその木以外の場所を指しているととれる。「かげに」がよくないので、三句以下は「電飾を支えて黒子となる冬の木々」としたらよい。
そのほかの数首を挙げる。
〇ア パ ー ト の 入 り に 葉 牡 丹 の 紅 白 を 植 ゑ て 春 待 つ 誰 彼 う か べ て
「誰彼うかべて」がざっくりしすぎて、アパートの住人のことなのかそれ以外の人を含むのか明確でない。また、「誰彼浮かべ」は「誰彼を思い浮かべ」を省略した表現かもしれないが、文法的に問題がある。結句は「住む人思ひ」とすべき。
〇金 文 字 の “ 龍 愛 子 ” の 墓 に 対 き 掟 に 堪 へ し “ 愛 加 那 ” 思 ふ
墓や石碑などに対き、思うと読むのは常套的でありふれている表現なので避けるべき。思うと詠むことで自分が出てしまい、表現が俗になる。事実だけを読むようにすべきで、例えば「龍愛子の墓の金文字ひかりゐる藩の掟に耐へし愛加那」とするとよい。また、初句の「金文字の」に疑問が出た。墓碑に苗字が付くだけでも豊かな支配層であったことが分るのに、それが金文字であると初句で読めば二句以下で詠もうとすることを限定してしまっている。(この部分消化不良です)
〇事 故 あ り て 列 車 停 ま り し 窓 の 外 闇 に エ ン ジ ェ ル ス ト ラ ン ペ ッ ト 咲 く
過不足なく状況を説明できている歌だが、列車停まりしの「し」が問題。明らかな過去以外過去の助動詞「し」は使うべきでなく、下句は「夜闇にうかぶエンジェルストランペット」とすべき。また、「事故ありて」は初句から状況説明になっており避けるべき表現。たとえば「闇に咲くエンジェルストランペット見ゆ人身事故に停まる列車より」などとすれば初句からの状況説明が避けられる。
〇を だ ま き の 廻 り め ぐ り て 七 め ぐ り 来 む 春 や わ れ 年 女 な る
伊勢物語の「いにしへのしづのをだまきくりかえし昔を今になすよしもがな」のをだまきまでが繰り返しを導く序詞となっていることを踏まえたうまい歌。ただし、をだまきは繰り返しを導くのであってめぐりとつながっていることには疑問も出た。
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