コスモス福岡支部12月歌会報告
令和2年12月13日(日)アクロス福岡セミナー室2においてコスモス福岡支部の定例歌会が開かれた。提出された詠草は14首、欠席は1名、参加者は13名。選者は欠席、司会は大西晶子と有川知津子。選者評がなかったこともあり、相互に活発な意見を交換しあった。最高得点歌は栗山由利の歌。
〇軽快な足音がおひこしてゆく落葉かさなる川べりの路
人の姿を出さず足音だけに絞り込んで乾いた落葉の音を表現している。軽快な足音にランニング姿や速足の若い人を思うなど人様々であるが、音に集中したこと、川べりの道の景であることで印象深い歌になった。その他四首を挙げる。
〇渋滞で車うごかぬ夢に覚むテールランプの色ありありと
「色ありありと」の言い止しが不安定。「ありありと」どうなのかを叙述したい。そのテールランプの色が「ありありと」迫ってきたために目が覚めたのか、目覚めてもまだその色を「ありありと」覚えていたのか、など、評の前提となる解釈にあいまいさが残る。
〇マンションのすべての窓に灯をともし夕陽落ち行く香椎の潟に
「いざ子ども香椎の潟に白妙の袖さへぬれて朝菜摘みてむ」(大伴旅人)のように万葉集にもうたわれた由緒ある地名「香椎の潟」に沈む夕日と、その夕日を映してかがやく現代的なマンションの窓を読み込んでいる景の美しい歌。「灯をともし」はマンションの窓に明かりが灯るともとれるので、「窓を染め上げて」としたほうが分かり易い。
〇へバーデン結節の指でVサイン気付かれぬやう左右に振りて
Vサインをしているのが作者か作者がみている人かによって解釈が分かれる歌。へバーデン結節が分からないとそこで読むことをやめる人が出てくる。このように強い言葉は最初ではなくあとのほうに持ってくると良い。例えば「Vサイン気づかれぬやうに振りてをりへバーデン結節の曲がつた指で」などが考えられる。
〇お笑ひをニュース画面に変へくれぬ「ばあばはこれよね」子の家のテレビ
結句のテレビはニュース画面とあるので不要、「子の家に来て」とすればよい。四句の「これよね」の「よ」が効いており、ただの孫歌とはなっていないという意見が出たが、この歌のままでは、この会話の主が孫なのか作者の子なのかがはっきりしない。
以上です。令和3年1月の歌会はコロナ第三波のため中止。2月は状況を見て連絡します。
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